今回は、腰の筋肉の主役であり、姿勢や体の力強さに多大な影響を及ぼす大腰筋ストレッチのご紹介です。
大腰筋は後述する腸腰筋の一部ですが大腰筋単体で取り上げられることも多く、大腰筋トレーニングや体幹トレーニングなどで有名な筋肉です。
大腰筋は主に腰を曲げる、腰を捻じる、足を上げるといった、体の中心である腰を支え動かす大事な筋肉です。
大腰筋が疲れて弱くなっていたり、緊張して固くなってしまうと、腰に力が入らない、腰が痛い、といった状態を引き起こします。姿勢にも多大な影響を及ぼす筋肉ですから、ご紹介する大腰筋ストレッチで十分に柔軟性を養ってください。
参考リンク:大腰筋の機能解剖
今回は大腰筋ストレッチをご紹介させていただきますが、恵比寿整体院でも腰痛のご相談をいただくことも多く、また大腰筋は気の流れ(経絡・けいらく)とも密接な関係を持っているので、少し気のお話なども交え体幹を維持するという大事な大腰筋の機能解剖、効果的な安全な大腰筋ストレッチする方法とコツ、ストレッチだけでなく大腰筋を鍛える方法なども解説していきたいと思います。
大腰筋は身体の動きに関して重要な筋肉なので大腰筋の機能解剖的なことも解説しますが、解剖学的なことがめんどくさい方は飛ばして大腰筋ストレッチのやり方をご参考ください。
大腰筋
大腰筋はお腹の中にある筋肉で背骨(腰椎)から大腿骨に付着する筋肉です。
ん~、大腰筋は見るからに姿勢や体幹の動きに関与しそうな筋肉ですね。
大腰筋のあるお腹の中は、背骨の土台である仙骨、その上に乗る腰椎、下腹部内臓が入っている骨盤、いかにも体の中心という場所です。
大腰筋が疲れてくると…
この大腰筋が疲れてきたり、弱ってきたり、緊張が取れないと…
上記のように姿勢にとっても関係する筋肉なんですね、大腰筋って。
背骨は健康ならば自然とカーブを描いています。生理的湾曲、S字カーブと言いますが、
大腰筋の緊張や疲れ、左右のアンバランスはこのS字カーブを乱してしまうんですね。
背骨は神経が走行していますから、S字カーブの乱れはそのまま自律神経の乱れを引き起こします。
大腰筋は姿勢や神経の働き、内臓の機能にまで深く関わっている重要な筋肉なんですね。
ご紹介する大腰筋ストレッチでお腹の中の緊張がほぐれると、
自然と腰が立ち、自律神経の働きも活発な状態になります。
東洋の整体、カイロプラクテックなどは背骨の矯正に専門化していますし、ヨガでも背骨の気(プラーナ)の流れを良くするために様々な体操(アーサナ)を行うんですね。
自分で大腰筋の偏りをチェックしてみよう!
大腰筋は左右ありますので左右の偏りが起こりやすい筋肉です。
誰でも利き手、利き足があるように腰の動きにも利き腰(?)があり、簡単に大腰筋の左右の偏りをチェックする方法があります。
大腰筋は足を上げる働きと腰をねじる働きがあり、この2つの動きで大腰筋の左右の偏り、利き腰が分かります。
足を上げにくい方の大腰筋が弱い
大腰筋はほとんどの人は左右の偏りがあり、上記の姿勢で足を上げにくい側の大腰筋が弱いということです。
東洋医学では気の不足、弱い方を虚(きょ)といい、反対に過剰、強い方を実(じつ)といいます。
大腰筋は左右の虚実(きょじつ)がはっきりわかる筋肉です。
上記の大腰筋の偏りのチェックは椅子に座ってもできます。
腰をねじりにくい方の大腰筋が弱い
また大腰筋は股関節を外旋する筋肉なので、腰をねじってみてもねじりやすい方、ねじりにくい方の違いがあります。
日常では腰の回旋はあまり行いませんが、スポーツや運動では力強い体の力を引き出すためには腰の回旋は欠かせません。
特にスノーボードやサーフィンなどの横向きのスポーツは、右左の得意、不得意がよくわかるスポーツです。
大腰筋の起始と停止
筋肉は体幹側の付着部を起始(きし)、遠位側の付着部を停止(ていし)と呼びます。
大腰筋は背骨下部から大腿骨に付着する筋肉です。
大腰筋の起始:
第12胸椎と第1腰椎~第5腰椎の椎体側面、全腰椎の横突起
大腰筋の停止:
大腿骨の小転子
大腰筋の神経支配:
腰神経叢
大腰筋の起始
大腰筋が起始を持つ腰椎、胸椎(12番)ですが、横から見ても腰椎って太いんですね。横から背骨を見るとここに付着する大腰筋の重要さもわかると思います。
背骨は仙骨の上に腰椎が5つ、胸椎が12、頸椎が7つある構造で、腰椎はL、胸椎はT、頸椎はCと記します。
背骨は下に行くに従い太くなり、腰椎では大人の手でも回りきらないほどの太さです。
大腰筋の停止
大腰筋が停止する大腿骨は各部に名称があり小転子というところに停止します。
大転子などは自分でも確かめられてプロポーションに関係する部分なので有名ですが小転子もあるんですね。
大腰筋の触診
お腹には腹直筋があり、腹直筋が完全にリラックスしない限り大腰筋の触診は困難です。
大腰筋の触診はほぼできないと考えてもいいでしょう。
大腰筋はインナーマッスル(深部筋)とも呼ばれ、お腹の深部にあり指圧やマッサージなどでも直接には施術しにく為、ストレッチなどの運動療法でしかケアできない筋肉なんですね。
大腰筋が通る鼠径部
大腰筋の走行する鼠径部(そけいぶ)とはここ↓
ここには鼠経靭帯がありその下を大腰筋が走行しています。
何もそんな狭いところを通らなくてもよさそうですが、鼠経靭帯の下はとても狭いのです。
そこを色々な管や大腰筋などが走行しているのですね。
ですので、大腰筋の緊張などでも鼠径部の痛みや違和感としてこの辺に自覚症状が出やすいんですね、人体の急所というか構造的に弱い部分なのです。
大腰筋のように鼠径部を通る筋肉の緊張が鼠径部のしこりとして感じられたり、筋肉や管が通る隙間から内臓が飛び出してしまう鼠経ヘルニア(脱腸)などが起きやすい部位でもあります。
腸腰筋とは?
大腰筋は腸腰筋としても扱われます。
腸腰筋とは大腰筋、腸骨筋、小腰筋の総称です。
筋肉はいくつかの筋肉をまとめて総称する場合が多いのです。
太ももの前面の有名な筋肉、大腿四頭筋も4つの筋肉の総称ですし、太ももの後ろのハムストリングスも3つの筋肉の総称です。
こういうのがねぇ、解剖学を一般の人に分かりにくくしていると思うんですけどね(笑)。
各筋肉にて機能解剖的なことも解説していますが、腸腰筋ストレッチと大腰筋ストレッチは同じ形になります。
腸腰筋を構成する筋肉(外部リンク)
大腰筋の働き
大腰筋の働きはその起始と停止を見ればなんとなくわかると思いますが、大腰筋は股関節の屈曲と外旋、腰の屈曲をする筋肉です。
大腰筋は腰椎と股関節をつなぎ、足を上げる、腰を曲げる、腰を捻じるといった重要な働きをします。体幹トレーニングなども主にこの大腰筋を鍛えるためのもので、大腰筋の状態は体の重心や軸に直接に影響します。
股関節の屈曲
股関節を屈曲させる筋肉:
股関節を外旋させる筋肉
脊柱の屈曲
大腰筋は腹筋とともに腰を屈曲させます。
腰を屈曲する筋肉
- 小腰筋ストレッチ
- 腹直筋ストレッチ(執筆予定)
- 外腹斜筋ストレッチ(執筆予定)
- 内腹斜筋ストレッチ(執筆予定)
大腰筋と気の働き
ここでちょっと気のお話を。
東洋医学、特に日本ではお腹を重要視するんですね。施術でも健康法でも、文化的にお腹を重要視するんです。
腹黒い、断腸の思い、切腹(?)などのお腹に関する言葉も多く、お腹が感情の中心でもあり、生命活動の中心とする見方があります。
これはお腹の中には気の中心である丹田(たんでん)があり、丹田が気の中心であるということからきています。
実際にこの丹田こそが体の中心であり、体軸も丹田の延長上にあります。
丹田を中心に気というエネルギーが効率的に伝わったりするんですね。
だから東洋的な文化、武道、芸能などでは丹田を中心に動いたり、丹田を使って技をかけたり、丹田を動きの中心とする鍛錬法や型を重要視します。
気の中心は丹田ですけど、その気を伝えるのに大腰筋が大事なんですね。ちなみに丹田は腎経という経絡上にあり、大腰筋は腎経が司るとされています。
丹田、腎経は気というエネルギーを効率的に働かすには欠かせないんです。だから、このブログでも気を鍛える方法等で、丹田と腎経を鍛える方法を解説しているのです。
気の癒しを行うには、気の原理に即した体の動きができないとなりません。恵比寿整体院のセミナーでも指導している方法ですが、丹田や腎経を鍛える方法はそのまま大腰筋を鍛える方法でもあります。
ご興味のある方は、気の原理や気を鍛える方法なども覗いてみてください。
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大腰筋ストレッチのコツ
姿勢や体幹の力強さ、重心や体軸の安定に多大な影響を及ぼす大腰筋ですが、大腰筋を効果的に安全にストレッチするには少々コツがあります。
大腰筋ストレッチのコツは深い呼吸です
ずばり、大腰筋のみならずストレッチのコツは呼吸にあります。
ストレッチはうんうんと頑張って行っても、準備運動くらいの効果しかないんですね。
呼吸を深く、腹式呼吸(完全呼吸)を行いながらご紹介する大腰筋ストレッチを行えば、より安全に効果的に大腰筋はもとより、お腹の中、腰を気持ちよくストレッチすることができます。
あと、ストレッチのコツはリラックスするコト、解説する大腰筋ストレッチの形をとり力を抜くんですね。
腹式呼吸(完全呼吸)を行えば自然と息を吐くときに力が抜けるのですが、息を吐きながら力を抜くということができると、より大腰筋を緩めることができます。
大腰筋ストレッチのコツ:腹式呼吸・完全呼吸のやり方
息は口から吐いて、鼻から吸うようにします。
腹式呼吸とは横隔膜を上げ下げするようにお腹を膨らましたりへこませたりする呼吸法です。
深い呼吸が苦手な人は、ストレッチの前にお腹に手を当てて少し腹式呼吸だけして心身を落ち着かせてみてください。
この腹式呼吸に胸式呼吸を合わせたものが完全呼吸です。
- まず息をゆっくり完全に吐きます。
- ゆっくり腹式呼吸をしてお腹を膨らませます。
- 更に胸や肋骨を広げるように息を吸い続けます。
- 胸がめいいっぱい広がったら肩を上げるようにして息を吸い続けます。
- めいいっぱい吸ったら、口からゆっくりと限界まで息を吐いてください。
- この完全呼吸を10回ほど繰り返すだけでも、胸が広がり下腹部の内臓のマッサージにもなります。
- ストレッチもご紹介するストレッチの形をとり、10回ほど完全呼吸をしてみてください。
コツは息を吸うときに背骨を伸ばすようにして、息を吐くときはできるだけ身体の力を抜くと、ストレッチしているスジが息を吸うたびに更にストレッチされます。
ご紹介する大腰筋ストレッチの形をとり、この完全呼吸をすることを心がけてください。
更に詳しくはストレッチ効果を高める腹式呼吸をご参考ください。
腹式呼吸だけでも大腰筋ストレッチになる
大腰筋はお腹の中にあるため、腹式呼吸(完全呼吸)だけでも大腰筋をストレッチ、マッサージできる効果があります。腰が痛くてストレッチできない人、腰椎のヘルニアなどお持ちの方は、ご紹介した呼吸をできるだけゆったりと大きく10回ほど行います。お腹の中が、呼吸のたびに緩まり伸ばされるのを感じてみてください。
正座したり、椅子に腰かけて背筋を伸ばしてから腹式呼吸を行うと、より効果的にお腹の中を伸ばすことができます。
大腰筋ストレッチ
運動前に最適なウォーミングアップ的な大腰筋ストレッチとより深く行う大腰筋ストレッチを2つご紹介します。
先述した呼吸を忘れずに自分に合った深さまでストレッチの形を取ってください。
ウォーミングアップに最適な大腰筋ストレッチ
運動前などストレッチを床で丁寧に行えない場合の大腰筋ストレッチです。
上記の大腰筋ストレッチは靴を履いて地面でも行えるので運動前に最適です。
会陰(股の中央)を地面に近づけていくと更に股関節が伸展できて大腰筋ストレッチが深まります。
更に深い大腰筋ストレッチ
この大腰筋ストレッチはとても効果的なのですが、かなり腰と下腹部を深く伸ばしていきます。食後2時間はお控えください。便秘にもよいストレッチです。
大腰筋ストレッチ・柔らかい人用
腰や股関節がある程度柔らかい人は上記の形から更に大腰筋ストレッチを深めていくことができます。
腰が比較的柔らかい人は、上記のように膝に両手を置いて天井を見上げると更に大腰筋をストレッチすることができます。
そんなんじゃ物足りない運動マゾの方には、上記のストレッチから更に大腰筋ストレッチ完成形を目指してください。
大腰筋ストレッチ・完成形(笑)
↑のような大変深い大腰筋ストレッチもあります。この形はすごい気持ちがいいんですねぇ(笑)。実は私もキツければキツいほどいいという運動マゾ(笑)、スポーツマンやアスリートの方には最適なストレッチ法です。
普段、伸ばせないところを気持ちよく伸ばせるストレッチです、癖になるかも…
詳しいやり方は、股関節(大腰筋)を柔らかくする方法にありますので、ご興味のある運動マゾの方はご参考ください。
追記:大腰筋のストレッチの動画解説
腰のストレッチとして、上記の大腰筋ストレッチの動画解説を作りました。
写真だけでは分かりにくかった人は、動画解説もあわせてご参考ください。
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補助付きの大腰筋ストレッチ
恵比寿整体院では施術前に補助付きの経絡ストレッチというモノを行っていますが、補助があると更に深く大腰筋ストレッチを深められます。
単にストレッチの形を補助するのではなく、「皮膚のゆるみを取る」という方法で大腰筋ストレッチを補助していきます。
肝・胆経のストレッチとして大腰筋ストレッチの補助を解説していますが、施術家さんたちなどにはお役に立てると思います。
まとめ
ご紹介した大腰筋ストレッチは、下腹部内臓や背骨全体もストレッチすることができるので背骨全体が柔らかくなり、自律神経を整えるのにも消化器や泌尿器にも大変によいストレッチなのでこのストレッチ・ツボブログでも一番のおススメのストレッチとしてご紹介しているものです。
大腰筋ストレッチのコツは完全呼吸です。呼吸を深く行うのを忘れずに、呼吸が浅いままご紹介した大腰筋ストレッチを行っても効果はありませんし、腰を痛めてしまう原因にもなります。安全に効果的に大腰筋ストレッチする為に、完全呼吸をゆったり深く行ってください。
丹田やお腹、内臓、体の重心や体の軸にも大変効果的なストレッチなので、一日1,2分でもいいので続けてみてください。1か月もすれば大変柔らかく力強い腰になりますよ。
また半身浴などもお腹の中を効果的に温めることができます。半身浴だけでも大腰筋の血行をよくできますが、半身浴の後にご紹介した大腰筋ストレッチを行うと更に安全に効果的に行うことができます。
また腰痛でお困りの方は、腰痛マッサージの手引きや腰痛のツボもお役に立てると思います。