前回、東洋医学の診断法、漢方四診について解説しましたが、まぁ問診や望診、聞診は様々な見立てがありましょうが、自然に相手の訴えや姿勢や顔の状態などを診ていれば大体の気の状態の見当は付きます。
しかし、漢方四診の中でも手技療法では切診(せっしん)はとても大事です。
切診は西洋医学での触診にあたりますが、切診は単に受け手の身体を触ってモノ的に診断するものではありません。
では何を診るのかというと、受け手の反応、気の反応を診るんですね。
単にスジを触って、コっているとか固いとかスジばっている、とかを判断するのではなくスジを触った時の受け手の反応、気の反応を診るのです。
だから手技療法においては、施術の最中は常に切診しているようなもの。ツボを圧すということも受け手の反応を想像しながら、共感しながら常に深さや方向を決めているのです。
切診
切診の切るというのは主に手で受け手の身体を触るコト。
鍼灸や漢方では脈診、指圧などでは腹診がよく用いられます。
何を診断するのか?
何を診断するのか、論理的に解説すれば気の虚実(気の不足と過剰)や五行の状態、五行と経絡の状態を診断して、全体性を回復させる施術の部位(ツボや経絡)を決めることです。
脈診
鍼灸では脈診と言って受け手の手首の下に3本の指をあてて、同じ場所で浅く脈をとる、深く脈をとるコトをします。
すごいですね、同時に3本の経絡の脈を診るんです。しかも同じ場所で浅くと深く。
脈診が発達したのは、昔は最先端の医療は高貴な人のモノでしたから、裸を見たり、触るということはタブーだったからという説があります。だから東洋医学では望診や脈診が発達したのだという説もあります。
脈診は漢方や鍼灸で扱われますが、指圧では腹診という切診もあります。
腹診
腹診は日本で発達した切診で、お腹の経絡を圧してその反応を見て受け手の期の状態を把握します。
お腹を重要視するのは日本的な見方ともいえます。腹黒い、断腸の思いなどのお腹に関する言葉も多いですしね。切腹も西洋人には理解できない日本の思想です。
按腹(あんぷく)というのも日本発のお腹への施術法です。
で、腹診に限らず重要なのは、切診はそのまま治療行為になるということです。
単に圧したり触って診断をするだけでなく、すでにその行為が治療効果をもたらすんですね。これは手技療法に携わる人にとっては重要なことだと思うんですけど。
その他の切診
脈診や腹診の他にも、背中の経絡を圧して(触って)診断する方法もありますし、手の経絡でも足の裏の経絡でも同等のことはできます。
また症状のある部位や͡コっているスジを触ることも切診ですが、これも先ほど書いたように切診=治療です。
ツボを圧すということは、切診あり施術行為であるんですね。
切診において重要なコト
腹診等の直接に深い経絡を切診する場合は、特に共感と想像力が大事です。
受け手の感覚、気の状態に共感しながら圧す、想像しながら圧すんですね。
どこが気持ちいいのか、どこに触れられたいのか、どの深さまでの施術が必要なのか、受け手が無意識に感じていることを想像して、受け手の感じていることに共感して圧したり触ったりしなければなりません。
一方的に触ってきたり、探るような手つきでは受け手の無意識は抵抗してしまいます。誰だって嫌ですもんね、探るような心や動作は。
手技療法においては、施術中はずっと切診をしているようなものです。受け手の感じていること、スジやツボを圧している深さや強さを意識して、受け手の求める(無意識的に)最善の深さや強さになるように共感や想像を切らさないことです。
切診は切心でもあるんですね。生きるという切なさに対する慈悲の心で切診、施術してください。