前回でよく効くツボ、特効穴20点の解説が終わりましたので、今回は気の癒し・実技編最終回です。
最後の実技は、頭蓋仙骨療法という治療法の中からCV4というテクニックをご紹介したいと思います。
この施術法は基本の手技の中に入れてもいいくらい重要な施術法なのですが、ツボや経絡、東洋医学の思想とは別物なので単独でご紹介させていただきます。
とても簡単な施術法なのですが、体全体を副交感神経優位のリラックス状態に導き、興奮しがちな神経の緊張を鎮め、体が持つ自然治癒力を活発化させる目的で行います。
頭蓋仙骨療法とは?
西洋には日本の整体に近いものでオステオパシーという療法があります。
手技で背骨や骨格の調整、神経系統の調整を行う療法ですが、アメリカやイギリスでは医師免許を取得しているものがオステオパシーの医師を名乗れます。
その中でも頭蓋仙骨療法というものがあり、これは骨格や筋肉への施術は違い独自の考え方であり、その手法も独特で、世界中で実践されている療法です。
簡単に頭蓋仙骨療法を説明すると、身体の中心部には脳から脊髄があり、脳脊髄液というものに浸っています。
この脳脊髄液はわずかなものですが、独自のサイクルで巡っていて、それがまるで呼吸のようなリズムのある周期で動いている、循環しているものです。
この脳脊髄液の循環のリズムが狂ったり、脳や脊髄への外傷でダメージを受けたり、交感神経の緊張が続き偏ってくると、自律神経系乱れを引き起こします。
このリズムは科学的にも証明されていますが、発明者はこれを第一次呼吸と名づけ、肺呼吸を2時呼吸として区別しました。
確かに呼吸のように全身がこのリズムで収縮を繰り返しているんですね。かすかですが呼吸とは別のリズムで膨らんだりへこんだりしています。
このサイクル、循環を偏りがあれば正常に近い状態に近づけて神経系の緊張を鎮めようとする療法です。
この療法は、代替医療の研究家で知られる医学博士のアンドリューワイル(Andrew Weil)氏の著書にも結構なボリュームで紹介されています。
自然治癒、自然治癒力というのもこの人が世に広めた感じがありますね。施術家、治療家を志す人は大体、この人の著書を読んでいるハズです。
で、私も読みましたし、私が初めて施術を学んだ師匠もこの療法を得意としていて伝授していただきました。
私自身もこの療法を行ってきましたし、もちろん自分でも受けてその効果を実感しているのですが、確かにこの療法には何かかがある。
この療法自体、全身的な効果があるので何がどう効く、とかどのような症状にどのような効果があるとは明確に答えられません。
ただ体とその司令塔である神経系の緊張を沈め、自然治癒力が働きやすい状態に導けるのは確かです。ある本には肺のうっ血を取るにはショットガン的な効果があるとか書いてありました。
確かにこの療法を受けると、呼吸が深くなり自然に腹式呼吸ができるくらい呼吸が深まります。コリも毛細血管の酸欠だと思えば、スジのコリだってこれである程度緩められるし、確認もできます。
しかも、簡単。しかも受け手には何の負担も与えない、失敗もない。
これは取り入れないと損ですよね。
これは任脈督脈の調整、活性化でもある
オステオパシーもそうなのですけど、西洋にはカイロプラクテックのように背骨を重要視する流れがあります。
東洋医学では身体の正中の気の流れ、前を任脈(にんみゃく)後ろを督脈(とくみゃく)といい全経絡のボスみたいなとらえ方をしていますが、任脈督脈への施術方ってないんですね。
少しはあるのですけど、なにかアンタッチャブルな扱い。アンタッチャブルというか施術法、改善法がないんですね。イメージトレーニングの気功法としてイメージで任脈督脈に気を流すイメトレをするぐらいです。
で、わたくし紡績髄液のリズムは任脈督脈の気の流れに多大に影響していると感じているんですけど、科学的に実証できることでもないしね。
もちろんこの第一次呼吸というリズムは任脈督脈だけではなく、全経絡の気の流れにも関与しているのでしょうけど、特に背骨の前後の気の流れである任脈督脈に深い影響を与えていると感じています。
一時呼吸のリズム自体、脊柱の中の脳脊髄液の流れですから、そう考えればこの循環の調整は、任脈督脈の調整や活性法と考えてもいいんですね。
頭蓋仙骨両方の手順
一応、習った通り、本で読んだ通りの手順を簡単に解説します。
本では確か10ステップとして、10の手順通りに行っていく、と書いてありました。
まずCV4、これは後で解説しますが、脳脊髄液のリズムの源である第四脳室の調整です。だから4がつくんですね。
そのあとに仙骨と腰椎の間の緊張を取ります。
そして体の横の緊張を喉、鎖骨、横隔膜、下腹部の腹膜の順でとっていきます。
そして頭蓋骨の緊張、頭っていくつかの骨が組み合わさっているのですけど、この縫合部に緊張があると第一次呼吸のリズムを妨げてしまうということから、頭の骨の緊張を取ります。
(前頭骨、頭頂骨、側頭骨、蝶形骨、顎関節)
これで10ステップね。
cv4と仙骨部の調整以外は、5グラムタッチと言われるくらいのソフトなタッチで第一次呼吸を整えていきます。
とてもソフトな施術なのに、何かわからないけど効果がある、という面白い施術法です。
CV4
その中でも私が取り入れているのはCV4です。
ほかの部位は、全身への基本の手技でまかなっているのでいらないんですね。頭蓋仙骨療法自体もメインはCV4です。
(あと字の通りの仙骨部ね)
で、CV4ですが簡単です。
CV4の手順
受け手は仰臥位、あおむけになり術者の手をそろえて受け手の後頭部においてこれを支えます。
写真では見やすいようにタオルをかけていませんが、実際には和タオルなどを顔にかけて受け手がリラックスできるようにしましょう。
また術者の息が受け手にかからないようにしてくださいね、術者は顔を少し横を向けるといいでしょう。
手はこんな感じで交差させて受け手の後頭部を支えます。
支える手の当てる部分は母指球(ぼしきゅう)と呼ばれるところです。親指の下の掌の膨らんでいるところですね、両手の母指球で左右均等になるように受け手の後頭部を支えます。
受け手の後頭部の支える部分は、後頭骨の側部の曲がり角。少し出っ張っている部分に母指球を当てます。
で、頭の形ってすごい個性があるんですね。皆さん形や大きさが違う。
相手の頭の形に合わせて、母指球で支えてください。
母指球で支えられたら、少し両手を絞るようにして母指球に圧をかけます。
その状態で、第一次呼吸のリズムを感じてみてください。呼吸でも全身が動きますが、それとは違うリズムで後頭部が収縮しているハズです。リズムの周期も人それぞれですが、5~8秒くらいで膨らみ5~8秒くらいで縮んでいく感じです。
本来ならそのリズムに合わせ、膨らむときに圧を少しかけ、縮んでいくときに圧を抜く(左右別々にリズムに合わせてね)のですが、私が行ってきた結果、圧を少しかけっぱなしでも効果があります。
頭を母子きゅで支えたら、少し圧をかけて3~5分ほどそのままです。
これだけでも十分なリラックス効果が得られます。
症状がある場合、CV4をやる前に痛みやコリ、緊張を確認しておき、CV4を行った後にそれを確認して、施術の効果を確かめることもできます。
次回からはご紹介した実技を組み合わせて、実際にどのように施術していったらいいか、症状別に症例なども交えて解説していきたいと思います。