気の癒し・基礎編 vol6は陰陽五行論の解説です。
東洋医学の根幹となる陰陽五行論(陰陽五行説)ですが、なにもここでは学問的な解説をしても面白くはないので、東洋医学のこの基本理論に対しての私の思うところを解説していきます。
本格的に学びたい方は、各専門書や古典を当たってください。
東洋医学はややこしいんですね。
モノを扱うわけではなく気を扱う文化ですから、どうしても思想が強くなります。ある意味では宗教的でもあるんですね。
で、東洋の思想はキンタロー飴です。
物事は大きいものも小さいものも同じような性質を持っている。
世界のどこを切り取っても同じような構造が見られる。
原子も細胞も人間も自然も地球も宇宙も同じような性質や構造がある。
モノだけではありません。
小さい単位では家族も町や市、県も会社、どのような国も同じような性質を持っている。
だからこの共通の性質や構造を理解して、健康という分野に充てているんですね。
どうしてあらゆるモノに共通の性質や構造があるんでしょうね?
まぁ、ビッグバンから始まった宇宙ですから、すべての根源をたどっていけば一つの原点にたどりつきますし、出所が同じなんだから当たり前じゃん、とも言えますね。
そもそも東洋医学は気を扱うわけですけど、気って体を動かすエネルギーだけではなく、自然も星も宇宙も同じエネルギーに基づいて動いているハズ、そのエネルギーを気というんですね。
そしてそのエネルギーの原理を表しているのが陰陽であったり、五行であったりするんですね。
そして陰陽はわかりやすいけど、五行はわかりにくいのね。
陰陽五行論・陰陽とは?
とても簡単に陰陽五行論を説明していきますけど、これはモノや物事の分類法です。
陰陽は2つの性質と関係性、五行は5つの性質と関係性を表しています。
陰陽論
陰陽ですが、これは単純でいいですね。
物事には何事も裏表がある、コインのように。
男が陽なら女は陰である。海と山、猫と犬、ご飯とパン?、いや魚と肉。
物事やモノにはその反対の性質を持っているモノがある。
反物質もそうですし、電子もそうです。
モノでもなくていいんです。女性的な性質や男性的な性質、引き寄せる力と拡大していく力、愛と憎しみ。
う~ん、よくよく世界を観察してみると当たっているんですね、これ。
モノや物事には反対の方向性があるんです。
ほんと陰陽だけだったら分かりやすいですよね。2つの相反する性質だけだから。
陰陽の関係性
で、こっからがややこしい…。
陰陽は二元論として捉えがちなんですが、実は一元論なんですね。
陰極まって陽に転ずる、陽が極まって陰に転ずる。
これをうまく表しているのが太極図(たいきょくず)です。
陰と陽2つで一つなんですね、さっき二元論ではなく一元論といったのはそういうことです。
これまた上手いこと物事の性質を表していると思いませんか?
時計の振り子のように、全ては転ずる。
歴史を見るように政治だって保守が続けば次は革新だし、保守的な文化が続けばそれをぶち壊すようなカウンターカルチャーな文化が出てくる。
しかも陽の気と陰の気の性質までうまく表しているんですね、太極図は。
これは冷えとりにも関係する気の原理なんですけど。陽の気は温められ上昇し、陰の気は冷やされ下降する、といった気の性質をも表しています。
下半身が冷えるから頭がのぼせるんですね、頭がストレスでのぼせるから下半身が冷えるんですね。
これを下半身を温め滞りやすい陰の気を上昇させ、頭部に滞りやすい陽の気を冷やすことで全身の気の流れが活性化するのです。
図のように白い陽の気は上昇する気で、黒い陰の気は下降する気の性質なんですね。たまに方向を間違った載せ方をしている太極図もありますけど。
物事は陰陽が滞りなく巡っている、という状態が理想なんですね。
陰陽が滞る、というのが一番よくない、というかその滞りがすべての目に見える問題の原因である、という考えが東洋医学にはあります。
だから体でも風水でも何とかこの気の滞りをとって気の流れをよくする、という方向に行くんですね。
そして先ほどの太極図には陽の気の黒い陰があり、黒い陰の気に白い陽がありますよね。
陰の中にも陽があり、その陽の中にもまた陰がある、という無限ループを表しているのですね。
ここがね、東洋人には理解しやすいと思うんですけど、物事は相反するモノの対立によって成り立っているという理解というか科学的な思想が根底にある西洋人には中々と体得されない内容のようです。
全ては調和なのか、対立なのか。
これがね、キンタロー飴なんですね。
どこでも同じ、フラクタルな図形のように。
一点に全てがある、詩的に言えば「一滴の雨水にも世界が映る」。
これは実は気の癒しを学ぶ上でも、何が何でも感得しなければならないものです。
ツボの中にもツボがある、一つの経絡の中にも14経絡がある、だから一点の治療で全体が回復することができるのです、というしかありませんが。
そもそも絶対がないのだとしたら、自らの認識をより良いものにしていくほかありませんからね、人生は。
さすがにこれは、私なんかでは説明しにくですね。詩的な表現に頼るしかない、東洋医学の古典や仏典のように。
物事って科学的に突き詰めていくと、詩的な表現しかできなくなるんです。これもまた面白いトコロですけど。
陰経と陽経
気の流れである経絡(けいらく)も陰と陽があります。裏表の関係ですね。
12経絡も後で解説する五行に分類されるのですけど、前が陰で後ろが陽です。
陰経・陽経
- 心経・小腸経
- 心包・三焦経
- 稗経・胃経
- 肺経・大腸経
- 腎経・膀胱経
- 肝経・胆経
一系統の経絡の陰陽はペアというか助け合う関係性です。物事の裏表、パートナーですからね、助け合わなければ存在が危うい。
で陰経には五臓六腑の五臓が割り当てられていますね。
腎臓や肝臓など実質臓器という中身の詰まった内臓です。病気になると命取りになりかねない臓器です。
陽経には六腑、胃や小腸や大腸など、空洞のある臓器、六腑もなければ困る臓器ですが実質臓器と比べると重要度は低い感じですね。
だから重要なのは陰経で、滞りやすい経絡、経絡が司る体の部分に症状が出やすいのが陰経です。
陽経の方向性
気の流れとして陽経は上から下の流れです。
手は上げた状態で、手の先から体幹、頭から体幹、そして足先に流れる経絡です。
ある意味、上から下の流れなのでほっておいても自然と流れる。
陰経の方向性
陰経は体の裏の部分を流れますが(腕や足の内側、日の当たらない場所ね)、流れる方向としては下から上です。
足から頭に向かって流れる、脇から手に向かって流れる経絡です。
下から上ですからね、流れにくい、滞りやすいのが陰経です。
だから冷えとりで足や下半身を温めると、陰経の流れが回復して調子が良くなってくるんですね。
足首上の三陰交という有名なツボも、3つの陰経(腎経・肝経・脾経)が交わる場所という意味で、陰経は腎臓・肝臓・脾臓のような生命維持に重要な内臓を司る部分ですから、冷えとり大事にケアしてほしいんですね。
鍼灸の流派にも滋陰派(じいんは)という流派というか考え方があり、陰経を養う、陰経への気を補うという施術をメインとしているものもあります。
私の考えも同じで、肺経や脾経、肝経や腎経を重要視します。陽経の問題でもその裏の陰経を施術することで補えますしね。
心臓は五行の分類では火であり、陰経ですがその火の性質から滞りにくいのでしょう。
陰陽五行論・五行とは?
さぁ、こっからがややこしい。
2人だけの関係ではなく5人の関係だと思えば分かりやすいハズ。
五行論は物事は5つの性質に分けられる、一つのものには5つの側面があり、それぞれ助け合ったりいなしあったりする関係がある、と思って下さい。
ゴレンジャーのようなものです。それぞれ担当の色があるのも同じ。
人間も5人いれば、主人公、ヒロイン、賢いやつ、体育会系、ずる賢いやつ、と落ち着きますよね。
漫画も映画もこの5つの性質を持たせれば落ち着きます。上記のどれかが抜けていると、ど~も物語が落ち着かない。
で、五行とは木火土金水(もっかどごんすい)で、お互いを助け合ったり、いなしあったりするかんけいがあります。
五行の関係性・相生
上記のようにお隣同士は助け合うんですね。これを相生(そうじょう)の関係といいます。逆に言うとお隣しか直接に助けられない。
五行の関係・相克
相克(そうこく)とはいなしあうと書きましたが、上記のように一個飛ばしの関係性で、一方が他方を制約・抑制、打ち消してしまう関係です。
五行と経絡
12経絡も五行に分類されます。陰陽はペアなので、陰陽一系統が一つの性質を持ちます。
五行の関係性・まとめ
はい、これでやっと説明する要素がそろいました。
陰陽五行論には上記の図のように相生、相克、陰陽の関係性がありますが、経絡の内臓機能で見れば理解しやすいかもしれません。
例えば、食べ過ぎれば血が汚れるし脾経・胃経に負担がかかる、そのままでは消化器を壊してしまうので、食べ過ぎの負担を肺経・大腸経に相性の関係で回します。そうすると二酸化炭素も多く吐かなければならないし、お便りもたくさんしなければならない。
でも食べすぎが続けば負担は次の経絡、腎臓や膀胱にわまります。血液をきれいにしなければならないし出すものもたくさんしなければならない。
それでも食べすぎが続けば、腎経や膀胱経の次である肝経や胆経に負担が来ます。
どうしようもなく血液が汚れて腎臓や肝臓ではどうしようもなくなれば、血液自体が汚れているわけですから心臓(心経)に負担が回るという状態をうまく表しているんですね、上記の図は。
また相克は、腎臓にいきなり負担がかかると一気に心臓に行く、という一個飛ばしの関係だと思えばいいんです。体の終末のように腎臓が働かなくなり、心臓が止まる。
これは冷えとりの毒出しの理論でもあるんです。食べすぎなどの毒が腎経や膀胱経が司る内臓に溜まりやすい。
症状のある部分と原因の部分が違いますよね。このような場合は症状のある部分の改善とともに、その原因である他の部分も改善しなければ意味がありません。
五行をみるとこのことが分かりやすいのではないのでしょうか?
目に見える結果(症状)の原因にはどこか別の他の要素があるかもしれない、と疑ってみるのも大事だということです。
理論だけで病気治しに当たるのはよくありませんね。個人の気の状態、体の状態を見極め、処方もさじ加減が大事、ツボをとるならツボの深さや刺激の強さのさじ加減です、漢方も鍼灸もまた同じ。
治療というのも、受け手と施す側のお互いの関係性ですからね。人と人の関係性、これもまた治療においては大事な要素です。
陰陽五行論は物事の要素とその関係性をうまく表していると思いませんか?
東洋医学はモノではなくこのような関係性や要素の乱れを回復させるものだと思えばいいんですね。
次回はVOL7【気の癒し・基礎編 vol7】東洋医学の世界観です。