ストレートネックは病気ではありません。首の骨、頚椎は前後にカーブしているのが正常ですが、ストレートネックは首がまっすぐに歪んだ状態を示す言葉です。
面白いですね、まっすぐに歪んだなんて。
今回、お話しするストレートネックは、頸椎だけの問題ではありません。背骨全体、特に背骨の一番下の腰椎や仙骨まで関わってくる問題です。
ですので、改善法も頸椎だけストレッチしたり治療すればいいものでもありません。背骨全体のバランス、柔軟性が大事なのですね。
ということでストレッチの前に、大事な大事な背骨についてお話ししたいと思います。
生命の曲線美・S字カーブ
首の骨、頸椎の歪みは、実は頸椎だけの問題ではありません。背骨は頸椎、胸椎と腰椎、その下の仙骨まであります。
頸椎だけではなく、胸椎と腰椎も適度にカーブしていますが、背骨の前後の湾曲を、生理的湾曲・S字カーブといいます。
何のためにS字にカーブを描いているかというと、重い頭部を支える体重や重力を分散するためです。力が背骨の一点にかかっては危ないので、きれいな湾曲を描き分散しているのですね。
ですから、なんらかの原因で生理的カーブが崩れると、力の分散がうまくいかず一点に負担がかかるようになります。
背骨と背骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があり、これもクッションの役割をしています。健全なS字カーブと椎間板とで私たちは多少の衝撃にも無事でいられるのですね。
曲線というのは素晴らしいですね、エロティックでもあります(ここでいうエロティックとは合理的、融合的という意味です)。
力を逃がす、分散する、効率的にエネルギーを使う、といったことはこの曲線美があるからなんですね。
人間だけではありません。車も飛行機も空気抵抗をうまく逃がすには曲線が欠かせませんし、目に見えないエネルギーというのも螺旋という曲線を描いています。DNAの構造も2重螺旋の構造ですね。
そんな曲線の構造を人体の中心、背骨が持っているのは当たり前といえば当たり前のような、不思議といえば不思議のような気もしますね。
S字カーブが崩れたとき
このS字カーブが崩れたときの代表的な症例は、ストレートネックと猫背です。
- ストレートネック・・・・頸椎の前湾が少ない状態
- 猫背(円背)・・・・胸椎の後湾が強い状態
S字カーブのどこかが歪むと、身体はバランスをとるために、S字カーブ全体が歪むのです。背骨には体を働かせる大事な神経が走行していますから、背骨のゆがみは身体のどんな症状を引き起こしてもおかしくはないのです。
特に自律神経というのは、内臓を働かしたり休ませたり、人体の恒常性を保つのに、上手く働いてもらわなければなりません。
しかし、背骨のS字カーブの崩れが自律神経を乱し、様々な不定愁訴を引き起こす羽目になるのです。
S字カーブの崩れが引き起こす症状
- 猫背
- ストレートネック
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 肩こり、首こり、腰痛など体を支える筋肉の問題
- 胃腸、消化器の問題
- 息苦しいなど呼吸器の問題
- 運動能力の低下
- 椎間板ヘルニアなど骨格の変性
ん~、なんでもありですね。病気を背骨の異常が原因とみる治療もたくさんありますしね。
ということで、背骨全体の大切さがご理解いただけたと思います。ストレッチも首だけのストレッチより、背骨全体の柔軟性を回復させるようなストレッチが大切なのです。
ストレートネックの改善という意味で、部分だけではなく、背骨全体のバランス、S字カーブを取り戻すことが大事なのですね。
ストレートネックのストレッチ
まず、頸椎から背骨全体を柔らかくするストレッチのご紹介です。
なお身体の深部を緩めるには、ストレッチをするだけでは、ほぼ効果はありません。神経の緊張をとり身体の深部まで緩めるには、腹式呼吸が必要です。
ご紹介するストレッチの形をとり、自分に合った深さで、ゆったり大きく10回ほど腹式呼吸を行います。息を吸うたびに体が伸ばされ。息を吐くたびに体が緩まるのを感じてみてください。
腹式呼吸がわからない人は、まずはストレッチのコツ How to 腹式呼吸をご参照ください。
効果的なストレッチとは、呼吸を使い筋肉とともに神経の緊張を緩めることです。頑張ってやればいいというものではありませんので、リラックスして無理をせず行います。
背骨の柔軟性を高め、S字カーブを回復するためのストレッチです。頸椎ヘルニアや骨格の異常、鎖骨、肩関節の骨折や捻挫に対する処置ではありません。
骨や関節に損傷が疑われる場合は、まずは整形外科をご受診ください。
やり方
深く首を曲げていきますので、ストレッチの最中は絶対に首を横に向けないでください。目線はおへそを見るようにします。
行う時も、戻るときもゆっくり動いて急に首を動かさないでください。終わったらすぐには動かず少し身体の余韻を感じてみてください、身体のどこかや精神的な変化を実感できるかもしれません。
このストレッチのあと、背骨の下、特に腰椎と仙骨をストレッチできる形がありますのでご紹介させていただきます。
腰椎~仙骨のストレッチ
腰の痛みや内臓にも大変、効果的なストレッチです。ここでは特に腰椎と仙骨のストレッチができればいいので、あまり深くは曲げていきません。
ストレッチの姿勢をとり、10回ほど腹式呼吸を行います。腰やお腹の中が呼吸のたびに伸ばされますので、大変気持ち良いストレッチです。
やり方
身体が硬い人は硬い人なりに、気持ちよくストレッチできればいいのです。決して無理をしてはいけません。硬い人用、柔らかい人用に深さの異なる2段階のストレッチをご紹介いたします。
腰が固い人用
身体の堅い人は床に両手をついて、しっかり身体を支えて写真のような姿勢をとってください。そして腹式呼吸をしてください。上記の姿勢で腹式呼吸をすると、お腹の中、大腰筋がとても気持ちよくストレッチできます。5,6回深く腹式呼吸をしてください、お好きな方は10回ほど。これだけでとても深くストレッチできます。
腰が柔らかい人用
そんなんじゃ物足りない人は両手を膝の上において、天井を見上げてさらに腰をストレッチしてください。とても気持ちよくストレッチすることができます。
[aside type="warning"] 床から手を離すとグラグラしてしまう人は、そのまま床から手を離さずにストレッチしてくださいね。柔らかい人は膝の上に手を置いてストレッチすることでより深くお腹の中をストレッチできます。深く呼吸することがメインですから、腹式呼吸を忘れずに。
もう少し深くストレッチしたい方は、【腰痛ストレッチ】腰を柔らかくするストレッチのやり方をご参照ください。
[/aside]
まとめ
そもそも症状や病気は、全体のバランスの乱れと診ることもできますね。
ストレートネックという首のお悩みですけど、一時首のことは忘れて背骨全体のバランス、柔軟性を取り戻すことに集中しましょう。上記のストレッチを行っていれば、腰がいつの間にか楽になり、姿勢がよくなってきますよ。
もっと身体を健康にするストレッチを知りたい人は、7種類の基本のストレッチ【経絡のストレッチ法まとめ】をご参照ください。内臓や身体の働きに関する経絡(けいらく・気の流れ道)のストレッチが書いてあります。
また冷えとりなどで血行を良くすることも大事ですよ。