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脊柱起立筋ストレッチと筋トレの解説です。
今回は俗に「背筋」と呼ばれる脊柱起立筋について解説していきますが、脊柱起立筋は体幹を反る(伸展する)動きと体幹の側屈に深く関与する筋肉で、体幹の安定や力強い体幹の動きをするためには欠かせない筋肉です。
身体で特に鍛える必要のあるのは、体幹の筋肉である腹筋とこの脊柱起立筋、更に体幹の中の腸腰筋(大腰筋)。
あと、力強い下半身の動きを引き出すのに欠かせないジャンプ筋とも呼ばれる太ももの前面の大腿四頭筋。
何から鍛えていいか分からない方や力強い身体を作りたい方は、まずこの筋肉たちの柔軟性と力強さを養っていただきたいものです。
脊柱起立筋ストレッチと筋トレのやり方とコツに加え、脊柱起立筋について理解が深まるように脊柱起立筋の機能解剖もご紹介しますが、解剖学的なことがめんどくさい方は飛ばして脊柱起立筋ストレッチのやり方や筋トレのやり方をご参考ください。
でも、一生付き合う自分の身体ですもんね、背筋と呼ばれる脊柱起立筋について理解を深めておくのもきっと何かの役に立つハズ。
脊柱の構造
脊柱起立筋を理解するには脊柱、背骨の構造を知っておくと理解しやすいです。
脊柱起立筋は背骨や肋骨に付着する筋肉です。
脊柱はその土台に仙骨があり、その上に腰椎が5、胸椎が12、頚椎が7つあります。
腰椎は略してL、胸椎はT、頚椎はCと記し、L5と書けば第五腰椎のことです。
脊柱起立筋が付着する肋骨は胸椎とセットで12対、計24本の肋骨があります。
脊柱起立筋
脊柱起立筋とは俗にいう背筋のことで、略して起立筋とも言います。
そして脊柱起立筋とは、腸肋筋・最長筋・棘筋、3つの筋肉の総称です。
こういうのがねぇ、解剖学をややこしくしているのですね(笑)
太ももの前面の筋肉、大腿四頭筋も4つの筋肉の総称で、その裏のハムストリングスも3つの筋肉の総称なのです。
脊柱起立筋を構成する3つの筋肉
腸肋筋・最長筋・棘筋が脊柱起立筋を構成していますが、それぞれの機能解剖を記しておきます。
腸肋筋
脊柱起立筋を構成する腸肋筋(ちょうろくきん)は仙骨や頸椎から肋骨に付着する筋肉で、これまた3つに分けられます。
頸椎から肋骨や筋膜に付着する腸肋筋を頚腸肋筋、肋骨から肋骨(腱膜)に付着する胸腸肋筋、仙骨から肋骨に付着する腰腸肋筋、3つの腸肋筋があります。
腸肋筋の起始と停止
筋肉は体幹側の付着部を起始(きし)、遠位側の付着部を停止(ていし)と呼びます。
腸肋筋の起始:
肋骨後面からの胸腰腱膜と仙骨
腸肋筋の停止:
肋骨後面、頸椎の横突起
最長筋
脊柱起立筋を構成する最長筋も3つの部位に分けられます。
頭最長筋の停止部は乳様突起、胸最長筋の停止部は頸椎、仙骨や腰椎から肋骨に付着する胸最長筋、3つの最長筋があります。
頭最長筋や頚最長筋は頸椎の伸展と側屈、胸最長筋は腰椎の伸展や側屈に作用する筋肉です。
(胸椎は動きの少ない部位です)
最長筋の起始と停止
最長筋の起始:
仙骨と腰椎、胸椎の横突起からの胸腰筋膜
最長筋の停止:
頸椎と胸椎の横突起、乳様突起
棘筋
脊柱起立筋を構成する棘筋(きょくきん)もまた3つの部位に分けられます。
頭棘筋や頚棘筋は頸椎の伸展と側屈、胸棘筋は腰椎の伸展や側屈に作用する筋肉です。
棘筋の起始と停止
棘筋の起始:
項靭帯、頸椎と胸椎の横突起
棘筋の停止:
頸椎と胸椎の横突起、後頭骨
まぁ、なんとなく脊柱起立筋について理解が深まればいいのです。
脊柱起立筋は3つの筋肉の総称であると理解しておいてください。
脊柱起立筋の起始と停止
脊柱起立筋を構成するそれぞれの筋肉について解説しましたが、まとめて脊柱起立筋の機能解剖を書き記しときます。
脊柱起立筋の起始
- 腸肋筋:肋骨後面からの胸腰腱膜と仙骨
- 最長筋:仙骨と腰椎、胸椎の横突起からの胸腰筋膜
- 棘筋:項靭帯、頸椎と胸椎の横突起
脊柱起立筋の停止
- 腸肋筋:肋骨後面、頸椎の横突起
- 最長筋:頸椎と胸椎の横突起、乳様突起
- 棘筋:頸椎と胸椎の横突起、後頭骨
脊柱起立筋の機能
脊柱の伸展と側屈
脊柱起立筋の触診
脊柱起立筋は、腸肋筋・最長筋・棘筋の区別は困難ですが、背部、特に腰部下部で触診することができます。
脊柱起立筋の働き
脊柱起立筋の働きは脊柱の伸展と側屈です。
胸椎は動きの少ない部位ですので、脊柱の動きは主に腰椎と頸椎で起こります。
脊柱の伸展
脊柱起立筋が収縮することで腰を反らす動きが伸展です。
脊柱起立筋は頸椎を伸展させる筋肉ですが、板状筋もまた頸椎を伸展させる筋肉です。
脊柱の側屈
脊柱起立筋とともに板状筋や胸鎖乳突筋もまた頸椎を側屈させる筋肉です。
脊柱起立筋の拮抗筋
その筋肉と反対の働きをする筋肉を拮抗筋と呼びます。
脊柱起立筋は左右でも拮抗している筋肉ですが、腹筋群が体幹を屈曲させる大きな筋肉で脊柱起立筋と腹筋群のバランス、体幹を反る力と曲げる力のバランスが大事です。
体幹を曲げる動き(屈曲)には腹筋群とともに腸腰筋(大腰筋)なども関与しますが、体幹を反る動きには脊柱起立筋以外の筋肉はあまり作用しないので、脊柱起立筋は特に鍛える必要のある筋肉だと言えます。
脊柱起立筋ストレッチ
では、やっと本題の脊柱起立筋ストレッチのご紹介です。
脊柱起立筋ストレッチは全脊柱を屈曲できる基本形が一つあり、あと側屈と回旋のストレッチがあります。
ストレッチのコツと3つの脊柱起立筋ストレッチをご紹介しますので、決して無理はせずにお試しください。
ストレッチのコツ
ストレッチのコツは呼吸にあり、呼吸を上手く使えば、より安全に効果的に筋肉を緩めることができます。
ストレッチのコツ:腹式呼吸・完全呼吸のやり方
息は口から吐いて、鼻から吸うようにします。
腹式呼吸とは横隔膜を上げ下げするようにお腹を膨らましたりへこませたりする呼吸法です。
深い呼吸が苦手な人は、ストレッチの前にお腹に手を当てて少し腹式呼吸だけして心身を落ち着かせてみてください。
背骨を伸ばすように息を吸うだけでも背骨が気持ちよくストレッチできますよ。
この腹式呼吸に胸式呼吸を合わせたものが完全呼吸です。
- まず息をゆっくり完全に吐きます。
- ゆっくり腹式呼吸をしてお腹を膨らませます。
- 更に胸や肋骨を広げるように息を吸い続けます。
- 胸がめいいっぱい広がったら肩を上げるようにして息を吸い続けます。
- めいいっぱい吸ったら、口からゆっくりと限界まで息を吐いてください。
- この完全呼吸を10回ほど繰り返すだけでも、胸が広がり下腹部の内臓のマッサージにもなります。
- ストレッチもご紹介するストレッチの形をとり、10回ほど完全呼吸をしてみてください。
コツは息を吸うときに背骨を伸ばすようにして、息を吐くときはできるだけ身体の力を抜くと、ストレッチしているスジが息を吸うたびに更にストレッチされます。
ご紹介する脊柱起立筋ストレッチの形をとり、この完全呼吸をすることを心がけてください。
更に詳しくはストレッチ効果を高める完全呼吸をご参考ください。
基本の深く屈曲する脊柱起立筋ストレッチ
どんな形でも脊柱を屈曲すれば脊柱起立筋がストレッチできます。
でもこんなんじゃ気持ちよくないですよね。
ということで、脊柱を完全屈曲できるストレッチをご紹介しますが、とても深く屈曲するストレッチのため首スジなどを痛めないように安全を心がけてください。
ご紹介する背骨を深く屈曲するストレッチは、頸椎から胸椎、腰椎まで深く屈曲できるストレッチです。
椎骨一つずつを屈曲しますが深く屈曲する分、力任せに行ったりしては危険ですので、決して勢いをつけて行ったり力任せに行ったりしないでください。
[aside type="warning"] このストレッチの最中は首を横に向けてはなりません。首スジを痛めてしまう可能性があるので、目線は天井とおへそを見るようにして首は横に向けないでください。 [/aside]
頸椎のストレッチとしてもご紹介しているものですが、勢いをつけて行おうとせず、ゆっくりと腹筋だけの力で写真のように足と腰を上げていってください。
腹筋が弱くて足が上がらない方は無理に行う必要はありません、このストレッチは無かったことにしましょう(笑)。
戻るときは反対の動きでゆっくりと戻ってきてください。
背骨一つ一つがストレッチできるように、背骨一つ一つを動かすように全ての動きはとてもゆっくり行ってみてください。
このストレッチの反対の動き、背骨を反るストレッチもありますので、ご興味のある方は頸椎のストレッチをご参考ください。
この脊柱の屈曲のストレッチを基本にして、後述する側屈とねじる(回旋)ストレッチを加えてみてください。
側屈する脊柱起立筋ストレッチ
脊柱起立筋は脊柱を側屈する筋肉ですが、片側の脊柱起立筋が収縮して脊柱が側屈しているときは、片側の脊柱起立筋はストレッチされています。
右側に側屈すれば左側の脊柱起立筋ストレッチになり、左に側屈すれば右のストレッチになります。
立って側屈する脊柱起立筋ストレッチ
簡単に側屈するのは立って指を組んで側屈していきます。
上記の形でも十分に側屈することができます。
脊柱起立筋は頸部から腰部まであるので、上記の形で首だけ側屈したり、腰だけ側屈したりして、任意の脊柱起立筋の部位を側屈してストレッチしていくこともできます。
床で側屈する脊柱起立筋ストレッチ
更に丁寧に側屈ストレッチを深めたい方は床で行います。
体幹の側屈ストレッチにて解説していますので、ご興味のある方はご参考ください。
補助付きの側屈ストレッチ
ご紹介した側屈ストレッチは補助付きでも行うことができます。
恵比寿整体院では施術前に経絡ストレッチとして補助付きのストレッチを行っていますが中々好評なんですね。
補助があるとこれまた深くストレッチできるのでパートナーがいる方や施術家さんたちには補助付きの脊柱起立筋ストレッチがお役に立てると思います。
回旋する脊柱起立筋ストレッチ
脊柱の屈曲ストレッチ、側屈ストレッチの次は脊柱をねじる(回旋)ストレッチです。
脊柱起立筋は背骨や肋骨にも付着するので脊柱をねじってもストレッチすることができます。
体幹は屈曲と伸展、側屈と回旋、この4つの方向のストレッチが大事なんですね。
立って体幹をねじるストレッチ
簡単に脊柱をねじるにはこんな感じ↓
坐って体幹をねじるストレッチ
更に丁寧に脊柱をねじりたい人は床で行います。
ご紹介した3つの方向のストレッチは脊柱起立筋ストレッチだけでなく、背骨全体のストレッチにもなります。
脊柱、背骨は自律神経が走行しているので、緊張しがちな神経の緊張をリラックスさせるためにも背骨のストレッチはお役に立てます。
側屈ストレッチもねじるストレッチも立って気軽に行えるので、憂鬱な日常に取り入れてくださいね。
これは使える!自己整体の様な脊柱起立筋ストレッチ
3つの方向の脊柱起立筋ストレッチをご紹介してきましたが、私が施術でも取り入れている整体の様な脊柱起立筋ストレッチがありました(ここまで書いて気づいてしまった…)。
本来は補助付きで行うものですが、自分一人で行っても任意の脊柱起立筋の部位を緩めることができます。
肘を突き出す方向を変えれば、腰部の脊柱起立筋や胸部、頸部の起立筋まで緩めることができる優れものです。
これが基本の形で、あとはストレッチしたい脊柱起立筋の部位が伸びるようにストレッチする側の肘を突き出します。
まず、上記のようにストレッチしたい部位に肘から下をねじったまま肘を限界まで突き出します。
そして肘突き出したまま肋骨が広がるように息を限界まで吸います。
肘を突き出したまま、目いっぱいまで息を吸ったら息を止め3秒キープ。
3秒したら大きく息を吐き、腕の力を抜きます。
10秒くらい休んでリラックスしたら、同じことを3回繰り返します。
ストレッチしたい部位の脊柱起立筋の方向へ肘を突き出し、大きく息を吸い、3秒キープして、息を吐き全身の力を抜く、という順番で自分で行ってもとても気持ちよく任意の部位の脊柱起立筋ストレッチができますよ。
身体全体のつながりを使った自己整体の様なストレッチ法ですが、少々分かりにくいかもしれないので今度、脊柱起立筋ストレッチの動画解説を作りますね。
脊柱起立筋の筋トレのやり方
では、脊柱起立筋ストレッチはこれくらいにして脊柱起立筋の筋トレの解説です。
脊柱起立筋を含む背筋は脊柱の伸展で筋トレすることができますが、ここではマシーンなどを使った脊柱起立筋の筋トレではなく、背筋が弱い人のための筋トレのやり方です。
ムキムキになりたい方にはお役に立てないと思いますので、ムキムキを目指す方はプロテインを飲んでマシーンなどを使った筋トレに勤しんでください。
基本の上体反らし
脊柱起立筋の筋トレの基本は上体反らしです。
脊柱起立筋を鍛えるトレーニングは多数ありますが、ほとんどのトレーニングは腹ばいになり重力に逆らい体幹を伸展させて脊柱起立筋の筋トレをします。
更に負荷をかけたいなら重りをもって行えばよいのですが、体重だけの負荷で十分に脊柱起立筋は筋トレできます。
では、チャレンジしてみましょう!
息を大きく吸い上体を反らし、息を大きく吐き上体を戻してください。
吸って吐いて一回ですが、できるだけ呼吸を長くして脊柱起立筋に負荷をかけてください。
腕の力を使っては脊柱起立筋の筋トレになりませんし、腰を痛めてしまうので注意してください。
脊柱起立筋の筋トレになるばかりでなく、腹筋のストレッチ、背骨のストレッチにもなり、ヨガでは背骨の中を流れるプラーナ(気)の通りをよくするために推奨されるアーサナ(体位)です。
コブラが首をもたげるように上体を反ってください。
初めは一呼吸で一回、慣れてきたら上体を反らしたまま5呼吸ほど上体反らしの姿勢をキープしてみてください。
これだけでも十分に脊柱起立筋の筋トレになりますので、脊柱起立筋を鍛えたい方はストレッチとともに日課にしてみてくださいね。
脊柱起立筋のほぐし方
ご紹介した脊柱起立筋ストレッチでも十分に脊柱起立筋をほぐせますが、下部の脊柱起立筋は自分でも圧しやすいため、脊柱起立筋を自分で圧してほぐすやり方を解説します。
自分でも下部の起立筋は圧しやすい
仰向けに寝ると自分の体重で脊柱起立筋が圧しやすくなります。
圧すというより、上記の圧す部分を自分の体重で支えれるだけで十分に気持ちよく脊柱起立筋が圧せます。
筋肉は際(きわ)を圧すのがほぐすコツです。
筋肉の真ん中ではなくスジの際、スジの横に当てて自分の体重をかければとても気持ちいい感覚があると思います。
5点くらい当てる場所を変えて圧してみると、ツ~ンと響くような、他の部位とは違った感覚のある場所があると思います。
そのような部位がツボですので、ツボを圧したような感覚のある部位を時間をかけて圧していくと脊柱起立筋はほぐれやすいです。
肩甲骨周辺の脊柱起立筋は圧せませんが、腰部の脊柱起立筋なら上記の方法で自分でも気持ちよく圧していくことができます。とても気持ちいいのでぜひお試しください。
施術では肘を使うとほぐしやすい
施術では脊柱起立筋などは肘で圧していきます。
特に肩甲骨と肩甲骨の間は気になるところではあるけれども自分では圧せないため、施術されたいですよね。
私は施術を教えてもいますが、施術家さんたちには脊柱起立筋への施術法がお役に立てると思います。
まとめ
背筋に腹筋は身体の力強さに深く影響しますから、積極的にストレッチで柔軟性を養い筋トレで力強さを養っていただきたいところです。
脊柱起立筋などの背中のスジのコリや痛みなどのお悩みがある方は、ご紹介した脊柱起立筋のセルフケアとともに正確にツボやスジを施術できる整体や指圧を受けてみるのもいいと思います。