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中殿筋ストレッチのやり方とコツの解説です。
小殿筋の上に中殿筋があり、その上に大殿筋があります。
中殿筋は小殿筋とともに働きますが、ここが弱いと歩いていて肩が左右に揺れるような(トレンデレンブルグ歩行)重心や体軸の定まらない身体の動きになってしまいます。
中殿筋と小殿筋は歩くときに働きますが、力強く股関節を動かす筋肉というより股関節の動きを安定させるような働きを持つ筋肉です。
お尻の横の中殿筋ですが、意外と大事な働きを持っているのです。
体軸や重心を安定させて効率的に力(気)を伝える。
これはどのようなスポーツや運動、武道や舞踏、ダンスのような芸能でも重要なことです。
重心がぶれているから無駄な動きが出るし、疲れる。
だから、このブログでも気を上手く使った動きができるように、気の原理や気を鍛える方法も解説しています。
そんな大事な気の原理にも関わる中殿筋なんですね。
中殿筋ストレッチと中殿筋の機能解剖的なことも解説しますが、解剖学的なことがめんどくさい方は飛ばして中殿筋ストレッチのやり方をご参考ください。
ストレッチ基礎知識
骨盤の構造
中殿筋は腸骨から大腿骨に付着する筋肉です。
殿筋とは?
小殿筋、中殿筋、大殿筋は殿筋(でんきん)、殿筋群とも呼ばれ、臀部とはお尻のことですが、殿筋は臀筋とも書きます。
お尻の横の筋肉である中殿筋、小殿筋はとともに股関節を外に動かします。
力強い下肢の動きをするには、この中殿筋や小殿筋が十分に発達していなければなりません。
深層から順に殿筋を並べてみるとこんな感じ。
お尻は幾重にも筋肉が重なっているので肉付きが豊かなのですね。
中殿筋(ちゅうでんきん)
中殿筋は小殿筋と大殿筋の中間にある筋肉です。
中殿筋の起始と停止
筋肉は体幹側の付着部を起始(きし)、遠位側を停止(ていし)と呼びます。
中殿筋の起始:
腸骨稜のすぐ下の腸骨外側
中殿筋の停止
大腿骨大転子の後ろ外側
中殿筋の神経支配
上殿神経(L4・5、S1)
中殿筋の触診
大腿骨大転子の5~7cm前方で触れます。
中殿筋の働き
中殿筋は小殿筋とともに股関節の外転と内旋、また股関節を外旋させる筋肉です。
中殿筋の股関節の外転
股関節を外転させる筋肉
中殿筋の股関節の外旋
股関節を外旋する筋肉
中殿筋の股関節の内旋
股関節を内旋する筋肉
中殿筋のように一つの筋肉で反対の動きを持っている筋肉はとても少ないです。
普通は筋肉の一つの動きの反対の動きは拮抗筋(きっこうきん)と呼ばれる筋肉の働きです。
曲げる筋肉と伸ばす筋肉は別々なのですね。
しかし中殿筋は股関節の内旋と外旋、両方の働きを持つ筋肉で、中殿筋の前部と後部で違う働きをしているのです。
昔の人の歩き方
歩行を安定させるために使われる中殿筋ですが、日本人の昔の歩き方は今とは違っていたようです。
今は右手と左足を一緒に出す歩き方が普通なのですが、これは明治以降の軍隊教育(フランス式の体育教育)の影響です。
昔は「難波歩き」といい右手と右足を同時に出す歩き方が主流だったようです。
お相撲さんの同じ手と足を前に押し出すような動きですが、犬や猫もそうですし、野生動物は大概がそうです。
実はこの歩き方の方が体軸や重心はぶれにくいんですね、死角もなくなるから武道的にもいい。
やってみると意外と難しいですが、慣れれば普通に同じ側の手足を出す歩き方はできます、チャレンジしてみてください。
中殿筋ストレッチ
中殿筋ストレッチはその働きの逆、股関節の内転と内旋と外旋でストレッチできます。
中殿筋の前部は股関節の内転と外旋、中殿筋の後部は股関節の内転と外旋でストレッチできるということです。
前部の中殿筋ストレッチ、後部の中殿筋ストレッチ、2つのストレッチをご紹介します。
ストレッチのコツ
実はストレッチにはコツがあります。
一般的なストレッチはその筋肉が伸びるような形をとるだけですが、それだけではなかなか柔軟性は回復せず準備運動くらいの効果しかありません。
私がおススメするストレッチは呼吸を上手く使ったストレッチです。
ヨガのように呼吸を深く行い(完全呼吸)ストレッチを行うと息を吸うたびに更に身体がストレッチされ、息を吐くたびに身体が緩まるのを感じ取ることができます。
中殿筋ストレッチの前に、ストレッチ効果を高める呼吸法をご紹介しますが、後述するストレッチも決して無理はせずに呼吸を深めることをメインに行ってみてください。
ストレッチのコツ:腹式呼吸・完全呼吸のやり方
息は口から吐いて、鼻から吸うようにします。
腹式呼吸とは横隔膜を上げ下げするようにお腹を膨らましたりへこませたりする呼吸法です。
この腹式呼吸に胸式呼吸を合わせたものが完全呼吸です。
- まず息をゆっくり完全に吐きます。
- ゆっくり腹式呼吸をしてお腹を膨らませます。
- 更に胸や肋骨を広げるように息を吸い続けます。
- 胸がめいいっぱい広がったら肩を上げるようにして息を吸い続けます。
- めいいっぱい吸ったら、口からゆっくりと限界まで息を吐いてください。
- この完全呼吸を10回ほど繰り返すだけでも、胸が広がり下腹部の内臓のマッサージにもなります。
- ストレッチもご紹介するストレッチの形をとり、10回ほど完全呼吸をしてみてください。
コツは息を吸うときに背骨を伸ばすようにして、息を吐くときはできるだけ身体の力を抜いてください。
特に固く筋張っている中殿筋のようなスジは、丁寧に呼吸を上手く使わないとなかなか柔軟性は回復しません。完全呼吸を行うことを優先してご紹介するストレッチを行ってください。
更に詳しくはストレッチ効果を高める腹式呼吸をご参考ください。
前部の中殿筋ストレッチ
前部の中殿筋ストレッチは股関節の内転と外旋です。
上記のストレッチは股関節がある程度柔らかい方は簡単にできますが、股関節が固くてうまく内転できない方はしっかりと両手で身体を支えてください。
上記のストレッチの姿勢をとり、10回ほど完全呼吸をします。
背骨が伸びるように息を吸うと更に中殿筋付近がストレッチされるのを感じられると思います。
後部の中殿筋ストレッチ
後部の中殿筋ストレッチは股関節の内転と内旋です。
体幹をねじるストレッチでもご紹介しているものですが、写真のように足を組み股関節を内転させ、膝を肘に押し当てていくようにすると外旋がうまくできます。
股関節が固くて足が組めないような方はこのストレッチは無かったことにしましょう(笑)。
股関節が固いような方は、股関節ストレッチで柔軟性を回復してから上記の中殿筋ストレッチを行ってください。
ストレッチと合わせて覚えたいツボ圧し
上記の2つの中殿筋ストレッチはお尻の横のストレッチしにくいスジを伸ばすには最適ですが、ある程度股関節が柔らかくないとできないのが残念です。
股関節が固くて中殿筋ストレッチができないような方には、ツボ圧しで中殿筋やお尻の横のスジの柔軟性を回復させることができます。
中殿筋のようなお尻の横のスジ、歩行に使うスジはコリやすく緊張しやすいところです。
無理な運動や山登り、歩きすぎた時などお尻の横の中殿筋周辺が固く緊張して痛くなったりスジばってきた経験は誰でもあるハズ。
スジのコリや緊張にはツボ圧しが即効性もあり大変効果的ですから、自分で圧せるツボ圧しをご紹介します。
お尻の横のツボの圧し方
スジのコリや緊張をとるのに何かと重宝するツボ圧しですが、中殿筋のようなお尻の横のスジは自分でも圧しやすい部位です。
立っていても圧せますが、床に横向きに寝ると表面のスジが緩んでより深いツボを探すことができます。
横向きになりツボを圧す方の膝を床に落とすと楽に圧せる形になり、横向きの場合は上から下に向かって、床に向かって圧す方向性になります。
お尻の横の太いスジ上に効果的なツボが数点あります。横から少し深めに強く圧して、ぐりぐりしてみると太いスジが分かると思います。
強めに圧して気持ちいいところや「あ~ここか」というツボが実感できたら、10秒くらい持続圧をしてください。スジ沿いに1センチほど指をずらして、2,3点気持ちよいツボを圧してみてください。スジ自体を圧していく感じで上手く圧せると思います。
まとめ
私はお尻の横の中殿筋のようなスジへの施術はよく肘で行います。
親指では中殿筋のような太いスジを圧せないので肘で行うのですが、お尻の横のスジがこっているときにはとても気持ちのいい施術です。
しっかりツボやスジをとらえられて圧すと、緊張しているスジ沿いに響きやすいのが中殿筋への施術の特徴です。
とても気持ちがよく、スジの緊張をとる即効性もありますから、中殿筋のようなお尻の横のスジが気になる方は指圧や正確にスジやツボを施術できる整体などを受けてみるのもいいと思います。
施術家さんたちには中殿筋のスジへの施術方法がお役に立てると思います。